3学期始業式を放送により行いました。校長式辞(一部抜粋)を紹介します。
「ファースト・ペンギン」
皆さんは、テレビなどで、ペンギンが氷の上をうろうろしている姿を見たことがありますか。水の中に飛び込むそぶりを見せながら、なかなか飛び込まない。飛び込むかと思うとやめてしまう。お互いに、「お先にどうぞ。」と譲り合っているようにも見えます。実は、あのペンギンの仕草には、自然界における生存をめぐる厳しい条件が隠されているのです。
南極に暮らすペンギンたちは、海に飛び込んでは食料となる魚を捕ります。ところが、海にはシャチやアザラシ、オットセイなどの肉食獣がペンギンを狙って海の中で待っている危険性があります。魚は食べたい、でも敵がいて食べられてしまうかもしれない。ペンギンはいつも氷の上で右往左往しています。
そんなペンギンの中で最初に飛び込むペンギンが、「ファースト・ペンギン」と呼ばれています。他のペンギンたちは、最初に飛び込んだペンギンが無事にエサを捕って帰ってきたのを確認すると、次々と海に飛び込むのだそうです。 では、最初に飛び込むペンギンは怖くないのでしょうか? 最初のペンギンは、絶対に割が合わない役目だと思います。しかし、皆が皆そう思っていると、全員がエサにありつけません。みんな、飢えて死んでしまうかもしれません。誰かが1番にならなくては、2番目、3番目はないのです。
これは、ペンギンの話ですが、人間に例えるとどうでしょうか?
私は社会科の教員なので、歴史上の人物で考えてみました。真っ先に浮かんだのが、幕末の長州藩です。長州藩には、「ファースト・ペンギン」がたくさんいました。幕府の法律を犯してまでペリーの黒船に単身乗り込もうとした吉田松陰、松陰の基で学び、命をかけて江戸幕府を倒し、新しい世の中をつくり上げた高杉晋作、伊藤博文、井上馨たちです。彼らは、正に勇気を持って事に当たった「ファースト・ペンギン」達でした。
私たちの生活の中にも、時に、海を前にしたペンギンのような場面があります。幕末の偉人たちのように命をかけるようなことではありませんが、例えば、クラスの中で係などを決めるとき、どうしても友達に意見をしなくてはいけないとき、何か新しいことにチャレンジするときなど、最初に言葉を発したり、行動に移すことは、とても勇気がいること、大変なことだと思います。
みなさんは、今、中学生です。これからの長い人生の中には、この「ファースト・ペンギン」の精神を持ってチャレンジしなければならない時がきっとあると思います。そんなときには「行くぞ!」「やるぞ!」といった決意が大事です。
平成31年、今年の干支は「イノシシ」です。猪で思い出される四字熟語は、「猪突猛進」です。これには、イノシシは直線的に突進することから「がむしゃらに前に進む」という意味があります。「猪突猛進」は、エネルギーが感じられる言葉です。
まず一歩前に踏み出すこと、今年は、時に「イノシシ」のごとく、時に「ファースト・ペンギン」のごとく、前向きにチャレンジする年にしていただくことを期待します。
以上で、3学期始業式の式辞といたします。